猿とその他によるブログ。 将来見返してニヤニヤする用です。つまり日記

2019/03/25

Genius 2 Lesson 5 The World of Miyazawa Kenji is Our World日本語訳

こんちは、りーぜんとです。
自分今ちょっとした用事でアメリカにいるんですが、偉すぎるので課題をしております。
ちなみにこういう国語の教科書に載ってるようなイキリ文章は嫌いです。

ということで↓



Part 1
2008921日午後1時半、私は「イギリス海岸」にいました。といっても、そこはイギリスではないですし、ましてや海岸でもなく、宮沢賢治が「イギリス海岸」と呼んだ、岩手の花巻を流れる北上川の岸辺でした。
賢治は生涯を通じて日本から出ることはありませんでしたが、想像力によって地球の隅々まで、そして宇宙にまで出ていきました。彼は人生の大半を花巻で過ごしながらも、熱心に勉学に励みました。彼を他の地へと連れていったのは、知識を欲する彼の探求心と想像力でした。賢治は文学、詩、音楽、絵画、外国語などの勉強に没頭した、まさに「世界の人」でした。
なぜ私はあの時刻にイギリス海岸に立っていたのかと思っている人もいるかもしれません。過去にも何回か花巻には行ったことがありましたが、今回はそれまでの旅とは違いました。私は宮沢賢治賞の受賞のために花巻に来ましたが、賢治が死んだのが、ちょうど75年前の1933921日、午後1時半だったのです。
1時半にイギリス海岸に立っていたとき、突然風が吹きはじめました。その風は私の身体の中を吹き抜けていきました。賢治は空からやってくる風や光や雪は人間と交信をはかり、異次元の世界からのメッセージを送ってきているのだと信じていました。そのとき賢治は私に何かを伝えようとしていたのではないでしょうか?

Part 2
私はずいぶん昔にはじめて日本の地を踏んだ1967年に賢治の作品を発見したときのことを思い出していました。私が友人に「一番美しい日本の文学を書くのは誰だろう?」と訊いたら、友人は「宮沢賢治だよ!」と答えてくれました。私はすぐに本屋に行き、賢治の作品を1冊買いました。その頃、日本語はあまり読めませんでしたが、賢治の言葉の美しさと独創性は理解でき、彼の奇妙で愉快な、そして深く心を打つ作品にすっかり魅せられました。
その作品が私を研究と発見の旅に駆り立て、50年近く続いてきました。
しかし賢治は、単に美しい話と素晴らしい詩の作家などよりもはるかに大きな存在です。彼は、21世紀の私たちに立ちふさがる問題をどう理解し、それに取り組んでいくことができるかをわれわれに教えてくれることのできる作家です。賢治はいろいろな意味で、私たちと同じ世代の人間なのです。
少し歴史を振り返ってみましょう。
18世紀は、私たちが生きる際の基準となる個人の権利と近代民主主義という観念を与えてくれました。19世紀になると奴隷が解放され、人々は平等を信じるようになりました。そして20世紀には、女性や児童や少数民族に対する権利の認識が実現したのです。しかし、今世紀の「大テーマ」は何でしょうか?
私はそれを、私たち人間がどのように自然とどう関わるかという問題であると思います。
今後人類が生き延びることができるかどうかは、
どう自然を保護し、守っていくかにかかっています。自然というのは生きるものすべてを指すだけではなく、山を、川を、湖を、海を、そして私たちのまさに吸っているこの空気をも指しているのです。

Part 3
宮沢賢治は作家や詩人であっただけに留まらず科学者であり、宗教思想家でもありました。彼は観察と経験から、私たち人間は自分のことを「創造神」と見なすことを止め、仲間である動物たちを同等に扱い、我々に与えられた資源を守らねばならないことを学びました。この資源がなければ、私たちが地球上で生き延び続けられる可能性はありません。
賢治は菜食主義者でした。大人になってからは、肉や魚は口にしていません。「フランドン農学校の豚」という作品では、主人公である豚が、農学校の人間たちが自分を殺そうとしていることを知ります。幸い、その国の王様が新しい法律を発布します。それは動物から承諾を得なければ殺してはならないという法律です。豚は殺されることを拒否します。
賢治が言いたいのは、すべての生命は神聖なものであるということ、そして動物たちにも敬意とやさしさをもって接しないといけないということです。これは、私たち人間が21世紀において学ばないといけない最も肝心なものであると信じています。
賢治の「雪わたり」という物語では、キツネたちが人間に道徳と善悪を教えてくれます。仏教の教えのおかげで、賢治は動物と人間を同じ次元でとらえていたのです。
賢治は自分のことを宇宙の中のごく小さな要素としてみていました。命あるものは全てたがいに繋がっていると考えていたのです。北上川の水はミシシッピ川の水と同じであり、日本の東北の上空の空気は中国やロシアや、さらにもっと遠くの国のものとも同じであることを知っていました。

Part 4
2011311日の、原子炉の爆発事故を伴った東日本大震災の悲劇により、世界中の人々は、(イギリスの詩人ジョン・ダンの言葉を借りると)「何人も孤立した島にあらず」という真理を知らさめられました。人間はみなお互いの人生に責任を負っているのです。これが賢治の秘めていた信念でした。
私たちは今、自分のライフスタイルと価値観をどう見るかの、大きな転換期にさしかかっています。もし私たちが自分のことを「神」などと考え続けていたら、自分たちの生きている自然環境を破壊してしまうことになるでしょう。私たちには「幸福」ということを再認識させてくれる平和な革命が必要なのです。幸福とは、単にたくさんのお金が使えることではありません。私たち自身の幸福でさえ、大勢の他人の幸福で決まるのです。
賢治は、「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」と書いています。これこそがわたしたちの21世紀のモットーでなくてはなりません。
宮沢賢治は、私たちの21世紀を導いてくれる作家です。私たちが生き延びることができるかどうかは、私たちが自然の中で生きるというだけでなく、自然とともに生きることができるかどうかにかかっています。
私は、20089月にイギリス海岸に立っていたときに自身に起こったこと、そしてその日、風に乗って私の身体の中に吹き込まれたメッセージのことを、一生忘れないでしょう。
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